技術者のための本質を学ぶ数学1
初等関数と微分・積分

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動画セミナ
1日分解説資料
206ページ再生時間
6時間Python
コード付き
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M-0001-00
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数学,物理,工学すべての土台
数学は技術者が「設計」をするために必須の道具です.ロボット,電子回路,制御システム,リアルタイム信号処理,構造解析,データ分析,さらには科学技術全般を支える物理学の諸分野に対して,数学は非常に汎用性の高い「共通の解決手段」を提供してくれます.
その中でも本セミナで扱う「初等関数」と「微分・積分」はすべての土台であり,より実践的・応用的な分野へ進むための出発点となります.

微分・積分は「未来予測」をする道具
研究・開発の現場で「設計」と呼ばれる仕事には様々なものがあり,一概には語れません.しかし,最終的に達成したい目標は業界・分野を問わず,似たような事柄に収束すると考えられます.そこで,ここでは「設計の本質は未来予測である」と考えることにします.
「このロボットは動き出してから$x$秒後にどの位置にいる?どんな姿勢か?周囲の人に怪我をさせない挙動だと保証できるか?」という疑問に,設計者は答えなければいけません.ロボットを動かす前に,もっと言えばロボットを組み立てるよりも前に,設計者は対象の「未来の挙動」を把握している必要があります.
電子回路についても同様です.「この電子回路の電源をONしたら$x$秒後にどのような波形が出力される?各部を流れる電流は何Aか?発熱して火災が起きないと保証できるか?」という疑問に,答えを出す必要があります.結局のところ,プロが行う設計という仕事の本質は「まだ作っていない製品の挙動を予測すること」だと言えます.

こうした「未来予測」の仕事で使うのが,いわゆる「物理法則」です.ロボットを構成する構造部品の動きは,力学における「運動方程式」にしたがいます.また電子回路内部の電流や電圧は,電磁気学の「マクスウェル方程式」によって知ることができます.こうした物理法則を利用して対象の未来を予測し,便利かつ安全な製品を作る.これが現代の科学技術における基本的な方法論です.
そして,物体の運動や電場・磁場などの性質を表す「物理法則」は,そのほとんどが「微分方程式」の形で表されます.微分方程式とは,その名のとおり「微分を含む方程式」のことです.中学校で習う普通の(代数)方程式は,対象の静的(スタティック)な特性を表します.これに対して,微分方程式は「対象の動的(ダイナミック)な挙動」を表します.
もともと「微分」とは,対象のダイナミックな挙動を表現するために生まれた技法です.時々刻々と変化する対象の動きを表す方法は,「微分」を使った方程式すなわち「微分方程式」しかありません.また,微分と対になる「積分」は,微分方程式を解くための技法として使われています.様々な物の設計において,「微分・積分」は決定的に重要な役割を果たしています.
数学,物理,工学の役割分担
ここまで見てきたとおり,現代の科学技術の中心には「物理法則」があります.そして,物理法則は「微分方程式」の形で表されるのでした.結局,あらゆる場面で本質的に重要なのは「微分方程式」ということになります.
一般に,技術者が習得すべき数学(大学の理工系の学部で習う数学)のほとんどは「微分方程式を解く」とか「微分方程式の性質を理解する」ことを目的としています.よって,数学が担うのは「微分方程式そのものの扱い方を理解する」という部分になります.
これに対して,物理学とは「物理法則を発見する」すなわち「対象の挙動を表す微分方程式を作る/見つける」ための学問だと言えます.当然ですが,微分方程式(もっと広く言えば「数学」)がわからないと物理を習得するのはかなり困難になります.
そして,工学は「物理法則を便利に使わせてもらう」立場に相当します.実際の製品設計では「微分方程式を解く」ことが求められますが,これが困難な場合も多くあります.そこで適当なモデル化や近似をおこない,代表的な設計例をまとめた「うまくいくパターン集」を作ります.これをまとめた体系が「工学」という学問です.

数学や物理は,様々な工学の分野で重要な役割を果たす「共通部分」をまとめた体系です.よって,ある1つの技術分野について数学や物理の本質から具体的な実装まで丁寧に理解しておくと,まったく異なる分野の設計でも「全部同じように見える」ようになります.これは幅広い分野で活躍する技術者にとって大きな力になります.逆に,単なる表面的なノウハウ(具体的だが適用範囲が狭すぎる話)を暗記することはおすすめしません.これは適切な設計を妨げる行為であり,そして何よりも「退屈」です.
高校数学からオイラーの公式まで
本セミナの内容は,「微分方程式の扱い方を理解して自由自在に設計できるようになる」ための最初の一歩です.
実際のところ,微分や積分の基本的な操作はそこまで難しいものではありません.それでも「微分・積分がわからない」という場合は,微分や積分を実行する対象である「初等関数」を十分に理解していない可能性があります.そこで本セミナでは「三角関数」($\sin(x)$,$\cos(x)$,$\tan(x)$など),「指数関数」($e^x$など),「対数関数」($\log(x)$など)といった高校数学の内容から解説します.これは単なる復習ではありません.設計・開発の現場でこれらの関数を使う状況を想定し,具体的な用途と扱い方を学びます.

初等関数の定義や性質を十分に理解すれば,微分・積分の計算を自力でこなせるようになります.そのことを確かめるために基本的な計算問題をいくつか用意したので,ぜひ一緒に解いてみてください.また,物理や工学の各分野で非常に重要となる「テイラー展開」や「マクローリン展開」,「オイラーの公式」についても解説します.すべての内容を理解すれば,より応用的な数学や物理,工学を学ぶときに必ず大きな助けとなります.
実習用のPythonソース・コード付き
本セミナでは,学習の補助としてPython(パイソン)で記述したプログラムによる計算やアニメーションを利用します.Pythonに関する知識は必須ではありませんが,文法を知っていればセミナの内容をより深く楽しめます.
Pythonプログラムの実行環境については,Pythonインタプリタのインストールを参照してください.

前提知識
「高校数学から始める」ということで,小・中学校で習う内容は解説しません.以下の項目は既に理解していると仮定して進めます.
- 「正の数」および「負の数」の計算
- 「平面図形」および「空間図形」の基本的な知識(合同や相似など)
- 「式の展開」“$(a+b)^2=a^2+2ab+b^2$” など
- 「因数分解」“$a^2-b^2=(a+b)(a-b)$” など
- 「1次関数」の基本的な知識(傾きや切片など)
- 「2次関数」の基本的な知識(平方完成,解の公式など)
紙とペンをご用意ください
数学を効率よく習得するには,自分の手を動かしながら学ぶことが不可欠です.本セミナでは,重要な項目を扱う場面で「クイズ」と称して簡単な穴埋め問題を用意しています.ぜひ手元に紙とペンを用意し,動画を一時停止して考えながらご視聴ください.

本セミナの内容は,時間的な都合がある中でどうしてもカットできない項目を集めたものです.資料に書かれている数式や図は,本質的な理解を得る上で必ず通るべき「道」です.すべて自分で書き写せば,大きな学習効果が得られます.つまらない試験のためではなく,実際に設計の現場で使う道具として「手に馴染ませる」ことが重要です.
さらにやる気があれば,定義については自分の言葉で説明できるように,定理や公式は自力で導出できるように訓練してみてください.「こんな数式が何の役に立つのだ?」という疑問には,セミナの中ですべて答えているはずです.

解説内容
Part 1(初等関数,微分)
- 設計と微分方程式
- 三角関数
- 指数関数と対数関数
- 微分の定義
- 微分の性質
- 三角関数の微分
- 指数関数と対数関数の微分
Part 2(テイラー展開,オイラーの公式,積分)
- テイラー展開の導出
- いろいろな関数のテイラー展開
- オイラーの公式
- 積分の定義
- 積分の性質